英語翻訳のコツをつかもう!
英 日 翻 訳 セ ミ ナ ー
編著/北辰メディア (C)   

大切な翻訳の心得

 英日翻訳において原文の意味を正しく解釈することは基本中の基本ですが、それだけでは良い翻訳文をつくるための条件として不十分です。原文の思考の流れや言葉のリズムを訳文の中に再現しつつ、日本語として自然な表現にするための技術と工夫が求められます。

■原 文■
The Asian Brain Drain

   India's IT miracle has been created not by sales of cheap computers or peripherals, but by an army of skilled and adaptable computer programmers. India's programmers have proved themselves second to none, and their willingness to travel to other countries on short-term contracts has spread their reputation throughout the world. So high is this reputation that many multinational giants have outsourced some of their most crucial IT operations to Indian companies. This success has brought with it a major problem: Indian IT companies are finding it increasingly difficult to keep their most talented computer professionals.
   Over the last few years, the Asian Brain Drain has seen a steady flow of computer programmers and technicians from India and other Asian countries to the United States and Europe, lured by high salaries and a high standard of living. This Brain Drain may, however, turn out to have a silver lining. Gifted Asians who have established successful careers abroad often return to their home countries in later life and bring with them the skill and know-how accumulated abroad. As one senior Asian statesman put it, the Asian Brain Drain could, eventually, turn into the Great Asian Brain Gain.

■翻訳のポイント■
 原文は、インドのIT産業における目覚しい発展と近年の頭脳流出の状況について簡潔に述べたものです。
 日本語訳にあたっては、原文の熟語の意味や構文を正確に把握した上で、日本語らしい表現になるように訳し方を工夫することが重要です。たとえば、無生物主語をどのように訳すかということが、一つのポイントです。全体の話の流れを視野に入れながら、文脈に合った翻訳表現を考えましょう。

【語句】

第1パラグラフ
brain drain : 頭脳流出
an army of 〜 : 〜の大集団
prove oneself 〜 : 〜であることを自ら立証する
second to none : だれ[何]にも劣らない
So high is this reputation that ... : so 〜 that ...(あまりに〜なので…)の構文の倒置形です。通常の語順に戻せば This reputation is so high that ... となります。
multinational giant(s) : 巨大多国籍企業
outsource : を外注する、外部に委託する


第2パラグラフ
the Asian Brain Drain has seen ... : この文の see は「を見る」ではなく「を経験する」の意味で使われています。
 (例)This school has seen a lot of changes.
    (この学校は随分変わった)
    This jacket has seen long and hard wear.
    (このジャケットは長い間激しい使われ方をした)
lure : を誘惑する、誘い込む
turn out to have 〜 : 〜があることが分かる
silver lining : lining は「(衣服などの)裏」のことで、silver lining は Every cloud has a silver lining.(すべての雲には銀の裏地がある)という諺に由来する表現。つまり、「どんな雲も裏は(日が当って)銀色に輝いている」=「どんなに悪く見えるものでもよい面を持っている」という意味なので、silver lining は「(どんな不幸な境遇や状況にもある)希望の光、明るい見通し」を表します。
as 〜 put it : 〜が言ったように、〜の言葉を借りれば

■参考訳■
アジアの頭脳流出

 インドでITの奇跡を生み出したものは、低価格のコンピューターや周辺機器の販売ではなく、適応力のある熟練コンピューター・プログラマーの大集団である。インドのプログラマーは他にひけをとらない実力のあることを身をもって示し、短期の契約で外国に喜んで行ったので、彼らの評判は世界中に広まった。その評判の高さから、巨大多国籍企業の多くが社内の最も重要なIT業務のいくつかをインドの企業に外部委託するようになった。が、こうした成功とともに大きな問題も生じた。というのは、インドのIT企業は、最も有能なコンピューターの専門家を自社に引きとめておくことが次第に困難になってきているのである。
 ここ数年にわたりアジアの頭脳流出として起こったことは、コンピューターのプログラマーや技術者が高額の給与や高い生活水準に魅せられてインドや他のアジア諸国からアメリカ合衆国およびヨーロッパに向かって絶え間なく流れ出ていくことだった。しかし、この頭脳流出の陰には希望の光があるかもしれない。なぜなら、外国で立派な業績を挙げた才能あるアジア人が後に祖国に帰り、外国で身につけた技術とノウハウをもたらすことがよくあるからだ。あるアジアの長老政治家が言ったように、アジアの頭脳流出は結局のところアジアの大いなる頭脳獲得になる可能性を秘めている。

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